2007年12月6日木曜日

お隣さん ミッキー 

赤毛の女性が大好きなミッキーは小規模な会社の半分オーナー。 彼は作る人。彼もドナルドと同じ精密機器の職人さん。設計と営業担当はイギリスから移住してもう二十五年、最近やっとアメリカ市民権を取る準備を始めたエンジニアーのマイク。彼が後の半分のオーナー。 この二人は水と油ほどの性格の違いがある。どうしてこの二人が一緒に仕事をするきっかけがあったのか不思議なのだが、半年ほど前にお隣の建物に入居して新しく特注カプリングの会社を設立した。

ミッキーは一日が終わると、子供が泥んこの中に横臥して遊んだように汚い。機械工だから汚れるのはわかる。しかし同じ機械工でもドナルドはあんなに汚くない。共に黒のT-シャツに黒のジーン。機械の前に立つときは野球帽をかぶる、細身で長身までは同じなのだが、ミッキーは違う、タバコを吸っても灰皿を使わない。彼が歩くとゴミが集まるっていう感じ。鼻髯にあごひげ。長髪。女性と話しをするときなどいともやさしげにニコニコするのだが、髯ボーボーのおっさんがニコニコするとニヤニヤに見えるから不思議だ。
 
週末に友人二人とミッキーはサン アントニオへ出かけた。帰宅途中昼食はファミリースタイルの食堂でと決め込んだ。皿の上に大盛に盛られた食事は中年以降の三人には不覚にも食べきることが出来なかった。そこへ店主のデブオバチャンがいつもの顔ぶれと違う彼らのテーブルへ挨拶に来た。ミッキーの肩に手を置き、食事はどうでしたか?とにこやかに聞く。 三人とも美味しかったと答えた、オバチャンは、皆さんまだ食事は終わっていないようですね?と皿の上の食べ残しを見る。あなた方アフリカでは、食べる物も無くて飢え死にする子供が現在も沢山居るのを知っていますか? とジローと三人を見る。 ここに食べ残された皿の上の食べ物で何人の子供が今日も生きられると思いますか?ジロー。こんなに食べ残して、あのアフリカの子供たちに申し訳ないと思いませんか ジロー。
やさしく諭されたテキサス男たちはシュンと悔恨の念に囚われ、背筋を伸ばして素直に「イエス マーム」と答え、目を白黒させてもう一度フォークを手にして自分たちの食べ残しを腹に詰め込んだ。大いなる人間愛、これぞまさにファミリーレストラン。

ネー、 自分たちが、食いたくないのに、腹に詰め込むことがどうしてアフリカの子供たちを助けることになるの? 毎日食事が出来ることを何故申し訳ないと感じなければいけないのかね。 アメリカの政府は、税金をガッポリとかき集めてアフリカなど第三国へ配っているのと違うの? 自分は、十六才から働き通しですよ。 休みなく働いて、 仕事をしなければ家族を養えないから。自分は一度も社会福祉へ援助を頼もうと考えたこともない。 俺アフリカの子供たちへ機械の使い方教えに行こうかな?そうすりゃ彼らももう飢えないだろう? そんなことをぼやきながらわたしの事務所のコーヒーを飲みに来る。自分たちの事務所では相棒のマイクの淹れるコーヒーが美味しくないのだそうだ。 それなら自分で淹れたら?というと、マイクが自分の淹れたコーヒーを捨てるとボヤク。ソレッテ、ミッキーもマイクの淹れたコーヒーを捨てるの? ウヒヒーと笑うミッキー。同意が出来ないのはコーヒーばかりではないのだが。

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