2007年11月30日金曜日

母の日 2

小春日和の真っ青な空の日曜日。 秋夫君は六時起床、一週間分の洗濯物を持ってコインランドリーへ向かう。 土曜日に友達と遊びに行き時間がなかった、 今朝洗濯を済ませなければ、明日から仕事へ来て着ていくシャツもパンツもない。
三台の洗濯機により分けて洗濯物を押し込み、 コインを入れてオン。アパートへ戻りコーヒーを入れて三十分待つ。 ランドリーへ戻り、大型乾燥機の一つ扉が開いているのを見つけ三台分の洗濯物全部を押し込んだ。コインを入れてオンのボタンを押して彼はランドリーを飛び出た。花屋へ向う仕事が残っている。そこにやはり母親のために花を買いに来ていた友人とバッタリ、話し込んで気がついたら九時半。あわててランドリーへ戻り乾燥機を開けた。 エッ、マサカ 冗談でしょう。

約束の十時に秋夫君は我が家のドアをノックした。 手には紫陽花の花の植木鉢を持ち、 「母の日おめでとう、車は昨日一応掃除しましたから皆様が座れます」とニコニコしている。
玄関前の陽のあたるところに立つ息子、後五分かかるから中へ入るように進めても此処で待ちますと動かない。準備の出来た主人が外へ一歩、息子をハグして慌てた、ナンダお前、ビッショリだぞ。シャツ、スラックス、靴下すべてずぶ濡れの衣類を着ている。ランドリーへ一時間後に戻ったが乾燥機が最初から壊れていたのだ。 扉を開けたら、洗濯物が全部下にうずくまっていたと笑っている。時間がもうない、T-シャツやブルージーンは山ほどあるが、まさかそれを着て教会へはまずい、仕方なくアパートへ持ち帰った衣類を見てしばし考えたが、エイヤーとその濡れたシャツを着て我が家へ来たというわけだ。 
せめてシャツだけでも父親のシャツに替えたらと進める母親に、上が乾いてもスラックスが濡れていれば同じだ、このまま行こうと冷たい父親。新聞紙を座席に敷いて運転する息子が少し哀れであった。

ステンドグラスが綺麗な古い教会の中の冷房完備は抜群。 一歩御堂へ入ってヒヤーと冷たい風が天井から来る。祭日のミサは長い、今日は母の日ゆえ司祭も念入りの長い説教と聖歌隊の歌、次はお御堂びっしりと埋まった母親たち一人一人に司祭からカーネーションの花が手渡される。その時間の長いこと。 隣の息子の上に容赦なく吹き付ける冷房の風で彼は小刻みに震えている。時折立ち上がると、木の椅子の彼の座っている箇所が濡れて輪になっているのを見て直美が可笑しさをこらえて彼女の体も小刻みに震えている。

やっと終わったミサ、娘の提案で野外テラスのあるギリシャ料理の店と決めた。 陽のサンサンと降り注ぐ席で暑がりの主人は汗を流しながらの食事に店内に空席がありますけど移りますかと聞いてくるウエイトレスに主人は恨めしげに断っている。

食事が終わり、デザートは何が良いかとテーブルに来たウエイトレスが秋夫をジット見ている。少し間を置いて、彼女が息子に声をかけた、先ほどから気になっていたのですけど、 気分が悪いのですか?
「気分は悪くありませんと」と答える彼に、「あなたの体から湯気がたっているのですけど。」
それを聞いて私と娘の我慢が一度に爆発し大笑いとなった。 サンサンと降り注ぐ太陽の下に座る息子の衣類が一気に乾きだし、肩、背中といわず全身から陽炎にようにフワフワと湯気が立ちこめている。      

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