大学を出てから二年間の浪人生活にもやっと嫌気が差したのか、わが娘さんもついに大学院へ入学した。
専攻は臨床心理学。やはりクリニックの仕事から影響を受けたのだろう。 何故なら、つい最近までは、どの分野にするか決めかねていたのだから。 しかし、専攻分野を決めるのに二年は長かった。しかしレストランで自分の食事をメニューの中から決めるのに二十分は必要な娘のだ致しかあるまい。彼女も未だ若いのだ、のんびりやるさ。
これからは、やりくりして、午前中は大学院、午後は十一時までクリニック。火曜日と木曜は一日中授業。土曜と日曜はクリニック勤務。二週間に一度日曜日が休みになる。
毎日の食事はクリニックか、学校のキャフェテリア。最近はじめた一人暮らしのアパートの掃除は当分あきらめて、二週間目の日曜日は寝貯めと、母親の家へ帰って二週間分の洗濯と二週間分の栄養補給。そしてこれからの二週間分のアパートでの食事を母親の冷蔵庫から自分の持ってきた幾つかのタッパーへ移して帰宅。ついでにボーイフレンドのアダムも大学院生一歩を始めたのを期に二人はサヨナラをした。お互いに頑張りましょう。 いつまでも友達で居ましょうと決めたのだそうだ。
「超早食いになった。」
我が家の食卓に座って、未だこちらがサラダを食べているのに、娘はメインのステーキをペロリと終わらせている。
何じゃそれは?君はまだ未婚の女性だゾ。もう少しオチョボグチでゆっくりと噛め、と、文句を言いたい。
男子達はただ皿の上に食品がのっていればよろしい。味を楽しむなんてことは考えない。
故に12名の子供を引き連れて夕食を共にしても、サラダからデザートまでを済ますのに五分とかからない。一斉に初めて、直美が下を向いて一口、二口終わらせた頃には、ほとんど全員の皿は空になっている。しかし全員食事が終わるまでテーブルは立てない、また食卓でキョロキョロするのもマナー違反。皆な下を向いて一人いつまでも食べている研修生が終わるのをジッと待っている。 顔は下を向けているが、二十四の瞳はしっかりと上を向いて「アイツまだ食っている」と睨んでいる。
食べた気分にならないから、私も食事は呑みこむことを訓練したと。
もうどの子にも負けないくらい早いワヨと自慢する。わたしネ ハンバーガーを三口で終わるよ。 そんなこと自慢するナ、恥ずかしい。
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