バイクは一人で走るのと、つるって走るのとあるらしい。横に並んで走ることで道の両側を使うゆえ、後ろから来た車に横を占領されない。 兎に角いろいろと理由はあるらしい。 どちらにしても趣味として乗る話で、通勤とか仕事でバイクを使用するにはそうは行かないであろう。
洗車場で泥落としから始まり、エンジン、カーブレーター、トランスミッシオンと何でもでも取り外し、分解し、洗浄、また組み立てる。
夏を通しての六ヶ月間は帰宅後、週末の二日間は腹がすかなければ屋内には入ってこない。暑いガレージでタラタラと汗を流しながらの化粧直しに組み立てを繰り返えす。
Googleで検索しては、塗料は何処で買える、このシリンダーは何処に売っている、このオーリングは何処が製造元かともう忙しい。 何せ1982年版の車、製造元でもマニュアルはもうない。
お向かいのテイラーさんもその隣のマイクさんも週末になると、コーヒーカップを片手に陣中見舞いに来る。男と云えども、彼らは本当に姦しい。あーでもない、こーでもないと女性群顔負けだ。彼らの女房達はソットわたしに囁く。 亭主の生命保険を倍額にしろと。
永い苦労の道のりでやっと此処まで来た、これで近所を乗り回すのかと思いきや、颯爽と我が家の前に現れたのは細身の体を黒の革ジャン、革パンツに黒のヘルメットに黒のハーリーデイヴソンに跨ったジェフ。
そのジェフが生まれ変わったヤマハXJの試乗運転をする。
簡単に言えば、亭主君はまだ乗るのが怖い。エンジンを掛けてバイクが横すべりを始めたら困る、昔の感覚なんて頼りにならないことは当人もご承知らしい。そこでジェフ君のお出ましとなった。
XJのエンジンは一度でかかった、ジェフは何度も繰り返してスタートしては走り出し、戻ってきてなにやらご託宣を告げる。
タイヤの空気、ハンドルの曲がり具合、エンジンの音やかかり具合、ガソリンの臭いと、いくつかの押しが出たあと、「調子良いよ、来週は一緒に乗り出そう」と誘われ胸を詰まらせて喜ぶ亭主だが、まだまだこれからすることが沢山ある。
バイクの登録、ライセンスの取得、車検、保険、ヘルメット、バイク用上着、手袋、サドルバッグ延々と費用のかかることを並べる。
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