2008年4月24日木曜日

亭主バイクに乗る

六十七歳という年齢で我が家の亭主はオートバイに手を染め始めた。まったく麻薬のように。もう四十年も昔に遊んだ玩具に又郷愁を感じるとは、これ幼児帰りかいなと気になるが、まあ仕方があるまい。人それぞれ。 

バイクは一人で走るのと、つるって走るのとあるらしい。横に並んで走ることで道の両側を使うゆえ、後ろから来た車に横を占領されない。 兎に角いろいろと理由はあるらしい。 どちらにしても趣味として乗る話で、通勤とか仕事でバイクを使用するにはそうは行かないであろう。

何処で見つけたのか、沼地に一年ほど漬かっていたような、バイクらしき原型の留めた物体を年寄りバイクの先輩ネッドと二人でエッコラ、ヨッコラとガレージへ運び込んだ。もう二人ともニコニコと笑いっぱなしだ。蛙を捕まえて家に持ち込んだ息子の小さい頃を想い出す。

洗車場で泥落としから始まり、エンジン、カーブレーター、トランスミッシオンと何でもでも取り外し、分解し、洗浄、また組み立てる。

夏を通しての六ヶ月間は帰宅後、週末の二日間は腹がすかなければ屋内には入ってこない。暑いガレージでタラタラと汗を流しながらの化粧直しに組み立てを繰り返えす。

Googleで検索しては、塗料は何処で買える、このシリンダーは何処に売っている、このオーリングは何処が製造元かともう忙しい。 何せ1982年版の車、製造元でもマニュアルはもうない。

お向かいのテイラーさんもその隣のマイクさんも週末になると、コーヒーカップを片手に陣中見舞いに来る。男と云えども、彼らは本当に姦しい。あーでもない、こーでもないと女性群顔負けだ。彼らの女房達はソットわたしに囁く。 亭主の生命保険を倍額にしろと。

1982年版、ヤマハXJ1100J Maximは六ヶ月の月日と、莫大な費用と、そして当人は体重五キロも痩せての結果、ガレージでピカピカと輝いている。

永い苦労の道のりでやっと此処まで来た、これで近所を乗り回すのかと思いきや、颯爽と我が家の前に現れたのは細身の体を黒の革ジャン、革パンツに黒のヘルメットに黒のハーリーデイヴソンに跨ったジェフ。

バイクはハーリの権化のような男。カリフォルニアまでも一人でハーリを飛ばしていく男。猛烈な無口だから出来るのであろう。

そのジェフが生まれ変わったヤマハXJの試乗運転をする。

簡単に言えば、亭主君はまだ乗るのが怖い。エンジンを掛けてバイクが横すべりを始めたら困る、昔の感覚なんて頼りにならないことは当人もご承知らしい。そこでジェフ君のお出ましとなった。

 XJのエンジンは一度でかかった、ジェフは何度も繰り返してスタートしては走り出し、戻ってきてなにやらご託宣を告げる。

タイヤの空気、ハンドルの曲がり具合、エンジンの音やかかり具合、ガソリンの臭いと、いくつかの押しが出たあと、「調子良いよ、来週は一緒に乗り出そう」と誘われ胸を詰まらせて喜ぶ亭主だが、まだまだこれからすることが沢山ある。

バイクの登録、ライセンスの取得、車検、保険、ヘルメット、バイク用上着、手袋、サドルバッグ延々と費用のかかることを並べる。

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