2010年3月18日木曜日

ナシヨナル ジオグラフィック

大きな動物が小さな動物を追いかけて食う。 大きな魚が小魚を何百と一度に呑みこむ海底の世界、それらをわたしはナシヨナル ジオグラフィック の世界と呼んでいる。 自然の世界を撮る写真集の名前。 その本の中に見る強者弱者の殺し合いの掟は哀しくもあわれな気持ちを誘う。

直美が大学生の頃、パートタイムで ヒルトン ホテルのフロントをしていた時。 或る日一人の若い男性がチェック アウトに来た。 褐色に日焼けしたその人の首、手は傷だらけ、まだ赤く腫れている。
その傷はどうしたのですか?の質問に、  あ~ これ、 わたしはナシヨナル ジオグラフィックの写真家です。 アフリカでライオンを撮っていて、ちょっと今回は油断して 側に近寄りすぎたのです。まだ手なんて良いですよ、わたしの背中は 鞭打ち百回ってな状態ですよ、と笑っていたそうだ。 
でも、傷も治ったし、痛みも薄らいだから今日又アフリカへ戻り、仕事を仕上げるとか。 

帰宅した娘は、 あの写真家ハンサムだったのに、 今度はライオンの餌食にならないように 気を付けくれないかしらね、 もったいないワ。

我が家の裏庭はそれほど広くない。 洋ナシの木が二本あったが、数年前に枯れて消えてしまった。 残るは ビワの木、 イチジクの木、 それにスイートガム(モミジの家族だそうだ)だけ。

毎年今頃になると、そのスーイト ガムの上に鳥が巣を作る。 いずれ聞こえる小鳥のさえずりは、今年も母鳥が頑張ってくれたのだと不思議と感謝が湧くうれしい気分になる。

ある年、 我が家の亭主は二羽の小雀の巣立ちの瞬間に居合わせた。 母鳥が隣の家の屋根の上から オイデ、オイデと呼んでいる。 それに応えようと、二羽の小鳥は一生懸命に羽ばたいて飛ぼうとする。 うまくいかない、 その内に、一羽がポトンと目の前に落ちた。 それを拾い、木に登り、巣にもどして上げて、又やり直し。 羽ばたく、少し飛んだ、近くの枝にドッコイショ、又羽ばたいて次の枝で一休み、 キーキー と啼きながらやっとの思いで二羽は親元へ辿りつき、 一緒に飛び立ったそうだ。 置き土産にしてくれた鳥の巣を家に持ち込み眺めていた亭主は 感激のあまり目に一杯涙を浮かべていた。

今はまだ三月、イチジクの木はまだ葉が出てきていない。 その丸裸のイチジクの木の突端の枝にダブ(野生のハト)が巣を作った。 今年の母鳥は少し頭がオカシイのか、なんとわたしの目の高さ葉もなく、誰の目にもさらされる箇所である。 その中には小さな卵が二つ。 そして昨日は雨。  雨ニモマケズ、風ニモマケズ、しっかりと二つの卵の上に座って耐えている姿が哀れで、傘を持って行って被せてあげようかとこちらはオロオロしてしまう。 おまけに 午後の晴れを待つがごとく
あの憎きクリクリ目の栗鼠が 塀の上からジッと 睨んでいる。 

あの巣の中の二つの卵が栗鼠の餌食になるのは時間の問題だ。 まさか 息子が置いていった空気銃を持って番をするわけにいかず、 結局早く葉が生い茂ってくれる事を願うしか方法はない。 

結局これが、ナショナル ジオグラフィックの世界なのだろう。 卵のまま襲われるか、 急いで産まれて世界へ飛び立つか、これから毎日、まだ生きているだろうかと窓からソワソワ と見守るしか私には出来ない。   

2 件のコメント:

じゅんたろう さんのコメント...

最近日本版が出ているようです。何十年も前、というか子供の頃にかなり分厚いその写真集を楽しんだのを思い出した。”Life”ってのもありました。その頃の私たちにとってそれらは見知らぬ世界への限りない誘いでした。無論買えるわけがありませんから教会に置いてあったのを楽しんだものです。
ところで、地図や地球儀は北に北極、南に南極を位置し、それぞれの己の国を地図であれば中央におきます。ところが全く逆に画くととても面白いのです。日本は弓形の列島です。それを中国やロシア、北朝鮮から見ると
扇の要(かなめ)から大きく太平洋へ開けた風景に見えるのです。
ロシアが北方領土の返還になかなか応じないのもさも在りなんと思いました。

革袋の一滴 さんのコメント...

こちらでも、これらの本は普通医者の待合室で読むことが多いです。

子供の成長時期には時々買っていたのですが、今の子供はTVで自然社会のことが勉強出来るようになっているようです。
Lifeという雑誌はその昔私の父が時々持ち帰っていたのを見ていました。そして リーダースダイジェスト というもう廃刊になった雑誌は 高校生の頃に日本語版を私自身が購買したのを覚えています。  懐かしいですね。