2011年4月8日金曜日

難関関所

私の読む小説本からの知識によると、お侍の時代に女性が旅をする時、関所で受ける検査は、 出女、入り女を規制する為、 手形持参でも、 女性に関しては、時には 別部屋へ入れられて、とんでもない身体検査まで受けたそうだが、現在飛行機を利用しての旅は、 
400年以上も前の日本の関所制度をいつの間にか世界中が利用している事になる。 考えると面白い。

それと同じに、 電話及びパソコンなどで、銀行の自分の口座などの情報を得ようとすることは出女(でおんな)のお咎めのごとく、この関所通過は至難の業と覚悟している。

姓名、生年月日、 自宅住所、 電話番号、社会保障番号(SSC)はたまた
母親の結婚前の名前、 飼っているペットの名前、時には、初めてのペットの名前、 結婚式の保証人の名前、好きなレストランの名前、質問は延々と続く。
これらの応えは最初に登録するときに記録として入力してあるわけだが、 
10年も保持している口座などで、 時たま、必要が生じて電話をしなければならないとか、 パソコンで自分の口座の残高を調べるときなど 実に面倒くさい。

普通はID と パスワードで 明けてくれるが、時々いろいろと聞かれるときがある。お若い方は、人生の歴史が浅いから、記憶はすぐそこにあるだろうが、高齢社会に属するこちらは困る。

普通はメモを横へ置いてパソコンに入るなり、電話をするのだか、 わが同居人はそうしない。
いつも突発的に始める、そして 「ヘールプ!」 と怒鳴る
結婚時の保証人って誰だっけ?
どのペットの名前を登録してあるの?
お袋の結婚前の名前覚えている?  トロビス~    アッそうだった  トロビスです
エッ違うの~ 
アッごめん、私の母親の名前だった。  エート ナンだっけ、ちょっと待って、
もういいって、その代わり結婚時の保障人の名まえ?    エーと エーと スガワラです
エッ、スペルリング? エート    カプーン
あっ切れちゃった。
そしてカッカと怒る。 
自分の預金であっても一度銀行へ預けたら、銀行の物。 右向いても左向いてもサービス料を口座から好きなだけ抜き取る権限を持っているお偉いさんなのだとどうしても理解できないらしい。 

四コマ漫画ではないが、私が頭に来るのは、いろいろと質問をした電話の相手へ、 失礼ですが、 貴女のお名前は? と聞くと、 「規則で名まえは言わないことになっています」と来ることだ。

私は日本の銀行にまだ口座を持っている。 残金は~真に零に近い金額であるが~私の口座には違いない。 もうだいぶ前に明けた口座であるが、 その頃はまだ母が存命中、住所や電話番号はそこを利用したはずである。 何故なら住所がそこであったのだから。   しかし、もう母の家はない。 兄弟姉妹皆自分の住居がある。  

口座は一応、海外からの使用頻度を考えて、こちらからも利用できる制度にしてある。
利用するときは、 契約番号、暗礁番号、確認番号、口座番号、こちらの口座番号といろいろとボタンを押さなければ利用できない。  
そして最近、それを押した。しかし、押す番号が多すぎる、 間違っては直し、又打ち間違っては打つを繰り返すうちに、機械の声ではなく、人間が電話口に出てきた。失礼、行員が電話口に出た。そして訊かれた。
「ご契約時に登録した電話番号をお願いします」。  さあ 困った。 どこの番号を登録したのか覚えていない。 慌てた私は自分の自宅の番号を言った。 「違います」次に、母の生存中の実家の電話番号。「違います」  それではと 姉の住いの番号 「違います」
「真に申し訳ありませんが、お客様はこの口座を利用できません」
契約番号も、暗礁番号も、口座番号も、確認番号も、こちらの口座の番号もすべて間違ってはいないが、
「登録時の電話番号に間違いがございます、申し訳ありません、 御利用は出来ません」
勿論、電話は「カプーン」と冷たい音を立てた。ソンナ~ 
正直未だにどの番号を登録したか覚えていない。もしかしたら 携帯の番号かもしれない。
しかし、 銀行口座を明けて、そのときの申し込み用紙をいつまでも保存して置く人はいったいどれほど居るのだろうか。

真に零に近い残高の口座である、 そのままにしてもどうでも良いことだが、 
やはり関所は「出女」への通過は厳しかった。

90歳だった母が、現金が必要になると、一人でフラフラと歩きながら、銀行へ出かけることがあったそうだ。  老人が実印を手にしての一人歩きは危ないから、 銀行の用紙に先に金額を書き、印を押し、印は自宅に置くようにと姉に注意されているので持参せずであった。

やっとたどりついた銀行、 カウンターへ用紙を提出。 しかし、母はお小遣いを手に出来なかった。  書いた数字のインクが薄いと言われた。 それでは、上をなぞろうとしたら、それは困ります。 別の用紙に新しく書き込んで下さい。しかし実印は持参していない。
仕方なく、母は退散、 自宅へ戻り又やり直し、今度こそはとしっかりと力強く数字も名まえも書き込み、印を押して、もう一度銀行へ。 母はその日は 自分の口座から預金は下ろせなかった。 今度は 実印の朱が薄かったそうである。 

2 件のコメント:

あらま さんのコメント...

銀行というところは、カネを入れるのは簡単ですが、出すとなると面倒くさいですね。
さて、日本の場合は、0金利政策が続いているので、銀行に入れておいても利子がつかないので、小生はタンス預金を利用しています。
もっとも、入金するほどカネがないというのが実情ですが・・・

信じられないと思いますが、30年ぐらい前までは、通帳とハンコを地方の信用金庫という銀行に預けて、金が必要になると、銀行に取りに行ったものでした。
「○○円出してくれ ! 」と言うだけで、残高があればカネを用意してくれました。
通帳の処理は、銀行のほうで全部やってくれました。署名から捺印まで・・・
それがお得意様に対するサービスと言うか、田舎ものは面倒くさいことが嫌いなので互いに簡単に済ませてしまうのでした。
田舎の連中は、皆 顔見知りだから ID なんて不要なんですね。
また、悪いことをすれば村に居られなくなるので、そんなことが出来たのでした。
今では、‘顔パス’なんてことは許されず、社長さんであっても、いちいち書面に記入して、顔見知りなのに身分証明書を提出しなければならない。
安全とは面倒くさいものです。

革袋の一滴 さんのコメント...

あらま様 こんにちは
母と銀行には後日談があります。
94歳の時に、アメリカまで孫の顔を見に来る予定を立て、 いつもの通り銀行へ行きました。 しかし今回は諸雑費の事を考えて桁が一ケタ上だったのです。
呼ばれてカウンターへ行くと、行員の女性から、 「いつもと違い少し高額でしたからお宅様にお電話をしました。これはお身内の知らない事だそうですね。 お身内さまから預金は下ろさないでくださいという依頼がありましたので、今回はお断りさせて頂きます」
電話に出たのは同居していた姉だったのですが、 私が驚いたのは、 銀行が母の自宅へ電話をして、 電話口に出た人間の言葉を信用した事なのです。
これって片手落ちですね。