2007年9月17日月曜日

カセットテープ

正月二日の朝知り合いから電話が来た。彼女はお向かいの高校生の娘さんが大晦日の夜に汽車と衝突して即死したので葬式に出ると話している。その娘さんは秋夫君の通う高校の生徒だった。 自動車社会のこの街では普通汽車とは貨物車が通過するだけのもの。旧道ガルベストン通りに沿って一日何本も貨物車は走る。実にのんびりと、昔観た西部劇映画の中に出てくるように、馬が走る汽車と一緒に走り、ヒョイと馬上の人が中へ飛び込んで..そんな映画の記憶が戻るような昔懐かしい汽車。しかしそうとばかりは云っていられない、
先日は私自身が夕方の忙しい最中に遮断機の前で40分も待たされた。上りが通過するまでその汽車は踏み切りの前から動かない。少し位置をずらしてくれたら好いのにと思うが列車があまりに長く、何処で停車しても何処からの遮断機を邪魔することになるのだが。その後の車の渋滞は思い出したくもない。 こうなると誠に迷惑な話である。

十二月三十一日大晦日はクリスマスや感謝祭と違い、アメリカ中が大晦日のパーティを楽しむ。十二時近くなるとどの家庭でもテレビをつけ画面から広がるパーテイに逢わせて最後のカウントダウンをし、その瞬間が来ると皆が抱き合い新年を祝う、良く話しに聞くアメリカの大晦日がどの家庭でも行われる。その後に子供達は野外に飛び出て花火を楽しむ。

友人の家のお向かいの高校生の女の子もボーイフレンドと連れ合って目指す家のパーテイーに急いでいた。男の子の運転する車は汽車の汽笛を後ろに聴いてスピードを上げた。早く汽車を追い抜いて遮断機が下りる前に踏み切りの向こう側へ渡らなければ何十連結もの貨車が通過するのを待た去れると、急げ、急げ、遮断機は降りかけているが、下を潜って渡れると判断したらしい。しかし、踏み切りの個所は何処でも盛り上がったように小高くなっている。左にカーブを切りながら坂のような個所を登り、線路とコンクリートのガタガタ個所にくれば車のスピードは極端に落ちる。彼等が踏み切りに乗り上げた瞬間汽車は其処まで来ていた。
二人の高校生は汽車の下に巻き込まれて即死。

あれから三ヶ月が過ぎた、亡くなった娘の遺品を整理していた父親は彼女の部屋にあったカセットプレーヤーの中に一つのカセット テープを見つけた。 これは誰か個人の持ち物と考え近所の同じ高校へ通うジェフに電話をした。 
電話を受けたジェフはそれは彼女の死の一ヶ月ほど前に彼女から頼まれてコピーを作ってあげたテープだと想い出した。自分はオリジナルを持っているから始末をして欲しいと頼んだが、父親から申し訳ないが取りに来てくれないか。 一応は君の手に返したいからとの云われた。

二週間後ジェフは高校のホームルームの時間に彼の手元に戻って来たそのカセットテープと自分のオリジナルのテープとプレーヤーを教室に持ち込んだ。
彼は教壇にプレーヤーを設置してクラスの皆にこのカセットテープが何処から戻って来たかと説明した。同じ高校に通っていた彼女の不幸は学校中の生徒が知っている。ジェフはこのテープは事故に遭った車からではない、車は殆ど大破され二人の遺体を引き出すだけがやっとだったそうだと説明した。もちろんそれは皆が知っていることだ。彼はクラスの皆に一緒にこのテープを聴いてくれるように頼んだ。 

最初はジェフのオリジナルのテープ。 メタリックのハイピッチなロックが部屋中に流れクラスの高校生は体を揺らしてその曲を楽しんだ。
ジェフがもう一つのコピーしたテープをプレーヤへ入れる。スイッチ オン。部屋中に前と同じメタリックの音楽が流れ出た。  そして五分後、この音楽のバックグラウンドに汽車の警笛が聞こえ出した。シュシュー シュシュー そして次に汽車の警笛が聞える、小さかった警笛がだんだん近づいてきて大きくなっていく。何度も何度も警笛が聞える。オリジナルのテープには汽車の音はない。 クラスの生徒が何故音楽の中に汽車の警笛が入っているのかといぶかしみはじめた頃 突然絹を裂くような断末魔の叫び声が「キャーッ」とテープから聞えた。その声はまさしくあの亡くなった女子高校生の声だったそして音楽がプツンと切れた。
 
放課後帰宅した息子の秋夫君がその話をしてくれた、それでどうなったの?と聞くと
「後は知らない、叫び声が出た瞬間にクラス中の誰もが教室から飛び出たから。もう凄かったよ、先生も一緒に飛び出して来た。あの先生の走り方速かったナー 女の子達は泣き出すし、 男には便所に走ったのが結構居たし、もう誰もクラスには居なかった。自分はいつも後ろのドアの近くに座るから今日はラッキーでした。一番早く走り出られた。」
ジェフも一緒に飛び出てた。 彼はクラス全員にあの叫び声を聴いてもらって、自分だけに聴こえるのではないと確認して恐怖から出たかったそうだ。

 在るんですね~ 怖い話が~

1 件のコメント:

じゅんたろう さんのコメント...

アメリカにでもそんな恐い話があるのですね。 日本でも「あなたの知らない世界」といったこわーい番組が時々あります。 私自身はっきりと幽霊を二度見た事があります。足はありました。 ですから本当の人間だと思ったのです。 恐怖感はありませんでしたが、私の民族学的好奇心がかき立てられました。 
じゅんたろう