2010年12月13日月曜日

言葉の巧みさ

言葉の難しさは外国暮らしをしている私には身にしみる事柄である。 米国生活全部合わせると39年になるが、 毎日持ち歩くバッグには Ex-wordと表に書いてある電子辞書が必ず入っている。これをどの頻度で使うかは これ又別のお話になるけれど。しかしこの辞書には広辞苑もあるから 結局両方の言葉の為に必要になる。 ボケ防止との戦いで、どちらの言葉が先に忘れていくか知らないが、 どちらの言葉もこの辞書が教えてくれるからひとまず安心。 その変わり、 辞書を引くこと、とか、どのボタンを押すか分からなくなったら 後は知らないヨ。

人それぞれ自分の生活範囲内の言葉の繰り返しで生活しているけど、ときには 外の世界へ出ると全く違う言葉を発見する。

我が家の同居人が、私と娘の会話を聴いて、何話しているの? まったく分からない と嘆くことがあるが、しかし、哀れな同居人はその疑問が解明することはない。
一言「お父さんは分らなくて良いの」「Daddy、 you don’t have to understand it」聴きようによっては、実に冷たい言葉かもしれない。

某日本企業と外国企業合弁会社に働いている友人、彼女は日本人女性。別名現地採用日本人社員となる。
両社の会議の議事録をまとめるほどのキャリアー女性である。 しかし、彼女も年金がもらえる年齢に近い、この仕事も少し肉体的に辛くなってきたとぼやいていた昨今だが、 最近この会社の敷地内に日本の別の企業が来ることになった。

先日は建築開始の地鎮祭も終わり、そろそろ新会社の関係者が本国からやってくる話も出て来た。そこで上司が彼女に話しかけた。  これから日本から何人か来ますから、その時は 「気にかけてあげて下さい」。 

そこで私たち二人は その言葉、「気にかけてあげてください」の言葉を分析した。  まあ、ぶっちゃけて話せば、日本人社員及びその家族が続々と来ますから、彼らの要求道理、知らない国で始める生活一般の手助けをしろ!と言っているだけの事だが、
それを言葉で表わさず、 仕事の一環であると強調せず、実際他所の会社であるから彼女には一切関係ないわけだが、しかし、勤務時間内であれば、頼まれれば知らん顔は出来ず、まどろっこしい~日本語だが、やはり私の友人は彼らを手伝わなければならないのは必至。 

そこで上司は「気にかけてあげてください」となる。 言わなくても分かるだろう?お願いではないのだよ、命令でもないのだよ、強制でもないのだよ、 アナタの気持ち一つですよ。アナタがどんなに無理難題を振りかけられても、それはアナタの問題ですよ、私には関係ないのですよ、 それから、 これに関しての給金は出ませんよ、と これだけの事が全部含まれているのだ。

この友人の上司の言葉の巧みさに脱帽です。

5 件のコメント:

あらま さんのコメント...

「この人を頼むね」「世話してあげて」・・・と言われるということは、部下の面倒を公私を問わず見るハメになるということになります。
そうなると、部下の愚痴も聞かなくてはならないし、部下の冠婚葬祭にも顔を出さなければならない・・・
時々、飲食にも連れて行かなければならない・・・
それが「人を育てる」ということなのかは分りませんが、部下の責任を負うことにはなるのですね。
部下の失敗の責任を被る・・・これが上司でした。
それが、年功序列の時代では当然のことでした。
ところが、日本が成果主義になると、部下のことなんて構っていられないのです。自分の成績が評価されるのですから・・・
そうなると、昇進が素直に喜べないのですね。
自分の仕事が出来なくなるではないか・・・。
そういうわけで、昇進を断る人が増えてきています。

そこで現れた言葉が「気に掛けてね。」
これなら「この人を頼むね」「世話してあげて」・・・と違って、明確に責任を押し付けたことにはならない。
言われたほうも、「気には掛けてはいたけれど・・・」と言い訳にもなります。
つまり、互いに便利な言葉なのですね。
一滴さまは、またしても、日本の「現代語」の特徴を突いていますね。
サスガです。

革袋の一滴 さんのコメント...

あらま様 ありがとうございます
私は知らないうちに 現代語を勉強しているのですね。 うれしいです。 

しかし、 「気にはかけていたけれど~」という逃げもあるのですね。 これお友達に知らせます。 ありがとうございます。

あらま さんのコメント...

小生の同級生の中にも何人か海外で暮らしている人がいます。
その人たちは「離れた地で見ると、日本の様子とか文化が分る・・・」といっておりました。
先日、同窓会で 40年ぶりに海外で暮らす同窓生に会ったのですが、彼らの「日本語」が懐かしいのですね。
つまり、小生が若かった頃に使われていた日本語がそのまま残っていたのです。
非常に分りやすいのです。
しかも、美しく威厳さえ感じるのですね。
何だか嬉しくなってしまいました。
おそらく、現代に吹く風に冒されていないからでしょう。
ですから、彼らは、現代語との違いを指摘することが出来るわけです。
そうしたことは時代に流されてきている小生には分らないのですね。
ですから、こうして一滴さまが書いてくださると、嬉しくなってしまうのです。
小生としては、願わくば、海外で良き時代の日本語を「保存」していただきたいと思うのです。
特に最近、小生は 自身のボケに加えて、新語やその使い回しの変化のテンポが速く、追いつけないでイライラしておりました。

革袋の一滴 さんのコメント...

あらま様  なるほど、凍結、冷凍されたお魚と同じですね。  でも それもどの年齢で日本を出来たかにもよります。若くま母国の言葉がしっかりと完成されないうちに国を出ますとやはり語彙が少ないです。 
その同窓生の方は 綺麗にことばを保存した方です。立派です。 

じゅんたろう さんのコメント...

この言葉の話題とても興味があります。皆様お書きのようにTV野コマーシャル、私はほとんどわかりません。”ため語”という言葉あるそうですが、それもどんなのかわかりません。
”ここでお塩と胡椒を入れてあげます”TVのしかもNHKの番組でのことです。 ”あげる”は謙譲語でこんな場合では使いません。目下の人(子供)にでも”・・・してさしあげました”とはいいますが、相手に対して敬意の表現では云います。いい加減にしろといいたくなるほど毎日でてきます。
”可愛い”もそうです。この言葉は、広辞苑でみれば判ります。外国語を学ぶ前に正しい、そして美しい日本語を身につけましょうよ。