2007年7月4日水曜日

秋夫16歳

秋夫君16歳 ついに来た親泣かせの自動車免許取得年齢。
15歳半から学校内に出向してくる自動車教習クラスで練習を始め、仮免まで取り16歳の誕生日が過ぎて規定の役所へ実技の試験を受けるのがこの当時の決まり。四年後の直美ちゃんの時は全てを学校内で済まし、誕生日に免許証が郵便で送られてくる組みに変わる。  暴走族一人上がりーお有難うさんでーす。秋夫君から電話が入る「ママー 予約は3時だよ。忘れないでね、 学校の前で待っているから必ず来てよ。」勇躍して試験場に向かう息子は前方をカッと睨み、鼻息まで荒く聞える。相当な興奮である。
免許証が手に入れば自由行動範囲は天井知らず、明日からは「ママ抜き」さしずめ母親に連れられて出かけるのは人生で今日が最後ぐらいに考えていることであろう。解るナー。親の方は来月からの男子25歳未満の自動車保険費をどうやりくりしようか頭が痛い。
ちなみに、女の子の場合、16―7歳であっても、妊娠をすれば、未婚でも保険料が大人並に値下げされるのをご存知だろうか。彼女は「母親」になる、すなわち大人になるからだ。 そこで妊娠をさせた男子も「父親」になるから値下げと思うがそうではない。男子にはこの規定が与えられない。
申し込み手続きに続く車の点検。 もし受験する車の保険証、車検の証明、登録番号の支払済み査証など一つを欠いても受けさせてくれない。米国では車の免許の実技に使用する車は個人負担である。

私がアメリカに着いて三ヶ月目で試験を試みた時はまったく無知であったため随分とバカをした。 夫が出張している合間に済まそうと、電話帳で見つけた試験場へタクシーで出かけた。 万が一にも落ちたときに知られるのが嫌だったからだ。
 筆記が終わり実技の予約を翌日に取り付け、翌朝再度タクシーで試験場へ出かけた。順番待ち30分、自分の番号が呼ばれた。 制服の中へ入りきれないほどの大きなお尻と胸。出ッチリ、鳩ムネの女性が車を裏の駐車場の横へ持ってこいと私に指示をする。
「車って?」
「試験用の車ですよ」
「チョット待ってよ。車の免許証の試験に来たのよ」
「だったら車持ってこなきゃ出来ないでしょう」
「免許証が無くてどうして車持ってこられの?無免許運転になってしまうでしょうが」
「誰かに運転してもらてくればいいでしょう」
「その誰かが居ないから一人で来たのよ。 ここまで運転してこられるなら試験なんていらないわ、試験用の車があるでしょう?」
制服のオネーチャンとの言い合いは延々と続くが、負けは私である。ガードマンが聞きつけて中へ割って入った。受験用の車は本人持参なんてまったく知らなかった。

秋夫君は母親と一緒に続けた路上運転半年。これは絶対と自信満々。ヨーイ スタートそして結果はバッサリと落とされた。  理由は「前方注意怠慢」前を向いて運転していてどうして前方の注意を怠ったのだろう。兎に角落ちたことは落ちた。明日の予約を取り付けて明日は敗者復活頑張ろうねと励ます。翌朝私は仕事場で従業員の一人ににその話をした。
 そこで彼女が話しによると、たまたま私たちが行った試験場は受験に来た16歳の男子には殆ど全員に最初の試験を落とす暗黙の決まりがあるのだそうだ。 少年達が路上運転ですっかり一人前の運転者の気になっている傲慢な気持ちを殺ぎ落とす目的なのだと話してくれた。何か分かるような気持ちだ。 彼女は、自分もあそこへ受けに行って落ちたし、彼女の夫も落ちたという。弟も落ちたし、義理の弟もダメ、そこで試験場の秘密を知った友人が他所の試験場へいったらパッチリ一回目で受かったそうだ。「今日再度挑戦でしょう?大丈夫、試験受けなくてもライセンスもらえるかもよ」と笑っていた。

免許証の取れた後の息子達は、アンレ我が息子はこんなに優しかったかしらと戸惑う。
「ママ、明日のミルクが足りないの知ってる、僕買ってこようか? ママ車の鍵どこ?」
「妹の水泳の練習へ僕が連れて行くから、ママ車の鍵どこ?」
「今度買い物いつ行くの?車運転してあげようか」
「今日のボーイスカウトの集会は自分で行くから、あっそうだ、友達も乗せて行くから、ママ車の鍵貸して?」 少年期の中で一番親にやさしい一ヶ月。  

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