2007年7月14日土曜日

直美17歳

娘の直美から大学進学の相談を受けた。息子が大学へ進んだとき授業料の問題が出るまでは部外者であった私にはうれしいことである。さあこれは忙しくなる。

さて娘の得意性はなんだろうと考える。 運動神経は抜群に良い。水泳は6歳から始めて高校は水泳部に所属していた。 155センチの超小型の女の子にしてみれば、180センチにとどく大型の女子高校生も混じる部員の中で今迄良く頑張った。全て練習量のなせる業であったが、肩を痛め鎮静剤を飲みながらのレースには本人が限界を知って三年生で辞めた。ちなみにアメリカの高校は四年間。



まずお転婆である。5歳の時、家の前で秋夫君が数人と取っ組み合いの喧嘩をしているのを見てお兄ちゃん 危うしと家の中へ駆け込み、東京のオジイチャンがくれた木刀を持ち出して振り回し男の子達を蹴散らかしたのも直美ちゃん。自分の身長より長い木刀を振り回す姿は中々傑作だった。


6歳でバレーとピアノを始める。 7歳のバレーのリサイタルの時丁度東京のお婆ちゃんが来ていた。 「白鳥の踊り」むろん直美ちゃんたちは湖畔で羽根をバタバタする白鳥の群れのはずだったが、お婆ちゃんは「ダチョウの踊りだね」と批評した。
ピアノの才能はない。まず音感がない。音楽の才能はお兄ちゃんに持っていかれたようだ。秋夫君はいつもピアノの先生から、「秋夫ちゃん大好き」と言われていた。今でもギターは楽しんでいる。  彼のアパートへ行くとベットの横、食卓の横とテレビの前のソフャーと三本のギターが立てかけてある。 毎日の生活の中でその三箇所に必ず座る、その時ギターを抱え込んでのテレビ観戦や食事に入るのだそうだ。
「お兄ちゃんは芸術センスは私の分もママから貰ったけれど、脳みそは忘れていったから私が二つ持て出てきた」と嬉しげである。
だから成績は良い。まあアメリカの学校は高校まではあまり勉強しなくても「A」が取れるようになっている。

それにつけても想いだすのは私が高校三年生のあの日だ。
結婚した姉が実家へ遊びに来ていた土曜の午後だった。 二階から降りて来る途中で自分の名前が聞えたので足を止めた。姉が母に、高校を卒業してからの妹の進路を聞いている。 
「どうって、大学へやるよりしょうがないでしょう。 だってあの子雑巾一つ縫えないのよ。どうするの、どっかの大学へ入れて、卒業したら適当なところ見つけて嫁にくれるよりしょうがないでしょう」
母の言葉、ショック、「嫁にくれる」とは何だ。結婚ではない、嫁にくれるという言葉の表現に驚いた。 女性が女性蔑視の先方を荷っている。世間の母親達が女性の向上心を阻止している。 自分の意志で人生を選ばず、自分の力で生活することを由とせず「女は三界に家なし」自分達で造った言葉に自分達で合点している。

その昔から、女医、産婆、教員、看護婦、賄い婦 女性でしか出来ない仕事はいくらでもあった、皆働いてきた。農家の主婦、商家の主婦、家業を手伝いながら子育てもする女性はいたが、世にサラリーマンの言葉が出来たときから彼等の妻が家庭に残り、婆抜き、とか昼寝つきなどという言葉が生まれた。そして主婦とはこう在るべきという気風を広めた。 母の実家は土建屋だったそうだが、兄弟姉妹全て商売人の道を進んでいる。 料理屋、八百屋、米屋(精米所、)工務店、何でも在りだが、どの伯母達も独楽鼠のように働いている。しかし給料取りと結婚した母は、自分の結婚が一番幸せだと言う。何故なら働かなくて良いから。

月曜の朝になると母が出勤する父の財布の中をのぞき
「お父さん、お小遣いお財布に入れておきましたよ。  先週はだいぶ遣いましたね、何を買いました?」
「俺は何も買ってないゾ、昼飯食っただけだ」
「そうですか?」
だが父は昼間呉服屋が大風呂敷を担いでこの家に現れ、その都度母の箪笥の中の着物の数が増えているのを知らない。
時折母の外出姿を見て父が
「オイ、その着物きれいだな、新しいのか?」そんな単純な言葉へ
「お父さんはそんなこと知らなくていいのですよ。うるさいですね」
「ソーカ、わるかったな」でおしまい。
 
私の知人が食料品店で店員のアルバイトをしている奥さんが居る。 彼女の夫は昼間はサラリーマンだが、夜間の短大で週三日講師のアルバイトをしている。 その夫が自分の余録の収入で魚釣りの道具を買った。彼女は猛烈に怒った。自分に相談しないで無駄遣いをしたという。彼女はその余録で二人で旅行を考えていたのだ。
夫は、これは自分のアルバイトの給料であって、昼間の仕事の給料は全部君の手元に行くではないか、それに君のアルバイト代を遣ったのではないと弁明したが、エスカレートした彼女は、男が妻のアルバイト代に気を回すとは情けないと烈火した。
「私が働いたお金は私の物です」
その彼女の息子が結婚して共働きをしている。若い二人は給料を全額出し合って一つの口座へ入れて生活しているのを見て、彼女は愚痴る。 「息子が可哀想よ。あの子の給料の方がずっと高額なのよ。不公平だと思わない?」
彼女には娘が居る。現在婚約中。知人はその娘に知恵を授けている。 
アノネ、結婚したら決して給料は彼のと一緒にしちゃダメよ。貴女のは別口座にしなさいよ。 生活費の中へ加えてはダメよ。自分の給料は自分の物としっかりともっていなさい。  女性とは摩訶不思議な生き物なり。

 

2 件のコメント:

じゅんたろう さんのコメント...

日本でも女性の独立が確立しはじめこのブログの話のようなことが起き始めています。
でも日本全体を考えるとアメリカの様にはならないでしょうね。女性は出産が有ります。
そこでほとんどおしまい。一部会社では男性の育児休暇を実施しているようですが、ニュースになるぐらいですからまだ一般的とはいえません。女性に悪いのですが、「私は自立しているのよ」と見せますが自分の都合で直ぐのその笠をたたんでしまいます。
好きな男性が出てくれば直ぐメロメロになるほうが多いようです。

革袋の一滴 さんのコメント...

じゅんたろうさんコメントありがとうごさいます。
アメリカでは、女性の自立の前に働かなければならない事情があります。日本のように一般家庭の経済事情は豊かではありません。 確か日本の報道によりますと、アメリカの平均貯蓄額は1900ドルと書いてあったのを記憶します。それはまあ、難民、不法移住者も加えるため平均値が下がることも云えるでしょうが、やはりそれほど豊かではありません。電化生活が行き渡り、 冷暖房完備の家を持ち、家族皆が車を持つ生活ですが、それを維持するのは大変なことです。それゆえ家庭の妻も子供が学業年齢になれば仕事に戻りTwo Income Family という言葉がありますが、夫婦二つの収入でやっと生活しているのが本音です。