2009年8月1日土曜日

ビール サミット

もう一週間程前になるが、マサチュッセッツ州 ケンブリッジ警察へ深夜女性の声で緊急電話が入った。 「近所の家に二人の男性が侵入しようと 肩でドアを押したりしているが 挙動不審の動作に見えるので連絡します」
初動捜査として 警官数名がパトカーでその家へ急行した、が不審な人物はすでに居なかった。 そこで警察官は その家のドアをノックした。 
すぐに 一人の男性がドアを開けた。 警察官はその人物に身分を明かすように尋問した。
男性は、 名前を名乗り、 ここは私の家ですと説明する。 
警察官はその男性に 身分証明書(ID)提示を要求した。 彼は自宅に居て何故私は自分のIDを出す必要がないと拒否した。 警察官は再度提示を要求した。 そして これが我々の義務である。 IDを見ない限りあなたを挙動不審の人間として逮捕しなければならないと説明したが 男はそれを拒否した。 男性は、 私は ハーバード大学の教授である。 そんなことも知らないのか?と怒りだす。
警察官はその大学教授の名をしらなかった故、再度身分証明証の提示を要求した。
あなたがこの家の家主であること証明できるものを提示してくれればよいだけ、再度それを拒否した教授は その場で 逮捕され、警察へ連行されてしまった。
その逮捕の際に その教授は、「私が黒人だから 警察は自分を逮捕するのだ、これは 人種差別、黒人蔑視である」と抵抗した。  

警察に連行されてのち彼の身分は明かになり、 その問題の家がその人物の自宅であることが判明して彼は直ぐに釈放された。 しかし、 物事はそれでは終わらなかった。 
そのハーバード大学の教授はオバマ大統領の友人であった為に すぐに大統領の知るとこととなった。 そして 翌日の大統領の定例記者会見で 大統領の口から 「警察官が愚かな(stupidity)なことをした」と発言したのだ。
大統領が地方の小さな警察沙汰を黒人問題の感情を底に秘めた問題として取り上げた。 

アメリカ国内に居る限り、 何処に居ても、いつでも、警察官から ID(身分証明証、写真付き)提示を要求されたら 速やかにそれを出すのは 義務であり、身の保全であることを忘れてはならない。これを怠ると即逮捕である。 IDを持っていないとは いろいろと誤解されて決して良いことはない。 

 このケースの場合、 教授は自宅の鍵を持っていなかったので なんとかして 家に入ろうと 運転手と二人で、 家のまわりを歩き、どこか開いていないかと探し廻り、 最終的にフロントドアを肩で押して自宅に入った。それを隣人に遠くから見られ、暗闇の中で不審者が家に侵入しようとしていると誤解されたわけだ。 
警察官がIDを要求したときに、奥の部屋へ行きドアまで持ってくれば、 何ごともなかったのであるが、 彼はそれを拒否した。
何故、警察官がしつこく質問したか?  本人がこれは自宅だと主張しても、 奥に人質を抑えて、いる可能性もある、また誰も居ない家に侵入して 盗みを働いていた可能性もある故、 写真付きのIDと住所を照らし合わせる必要があった。 これも 常識である。

しかし、この教授は、警察官が白人であったことと、 自分が黒人であることから 「黒人差別」と事件を持って行った。それに加担したのが オバマ大統領となる。 

大統領が警察官に対してstupidityという言葉を使用したことで その土地の警察官全員を向こうに回してしまった。 彼らは速やかに 警察官として、するべき義務を遂行していた行為を「愚かな行為」とは受け入れられないとその言葉を撤回することを要求した。 米国中の反応があまりに大きくなり、 大統領は翌日又記者会見をして、「使った言葉が悪かった、もっと調整(calibrate)された言葉を使うべきだった」と答える。 すなわち、言いたいことは同じであるが、違う言葉を使えばよかったと云っているだけである。

人種差別を叫ぶ教授に最初は同情があったが、 日が経つにつれ、 その場の状況が明確になってくると、結局は 差別被害意識の強い黒人の一人よがりという情けない話に落ち着き始め、誰かさんが恥をかき始めてしまい、どこかで終止を付けなければならなくなり、 大統領と教授と警察官三者がホワイト ハウスの野外ベンチで一緒にビールを呑んで水に流すということになり、それが実現した。 これを ビール サミットと報道されている。 
因みに ビールを一緒に呑みましょうと提案をしたのは 警察官だったそうだが、 今は大統領が提案をした事に挿げ替えられているそうだ。

ビールサミット後の警察管の記者会見によると、 副大統領バイデン氏も加わっての飲み会となったが、 「過去の事をほじくり返さず」 未来の事を話したそうだ。

余計なことを云うようだが、 アメリカに住む限り、現場で警察官に抗議をすることは 「公務執行妨害」で即逮捕である。彼らには 話し合いとか云い訳には決して耳を貸さない暗黙の条理が成り立つ。 私自身が過去に何度か起こした スピード違反による停止に関しても、 それは私なりの理由も必要性も誤解もあったが、 ひとことの反論も訊かず 違反ティケットを渡され、裁判所で逢いましょうとなる。 家人に云わせると、 警察官に抗議をしたわたしが 手錠をはめられて 連行されなかっただけ幸せと思えと慰めてくれたが。

これにより オバマ氏の人気率が少し落ちてしまったらしい。今の米国は 「国民健康保険」懸案を議会で通過させるかどうかで 大統領は毎日地方の市民への説明に選挙戦さながら 毎日演説に走りまわっている最中、心の中に見え隠れしている 黒人差別の問題を匂わせてしまったようだ。   

2 件のコメント:

じゅんたろう さんのコメント...

オバマ大統領にとって人種問題をいかにしていくか、多民族国家アメリカのみならず世界中の同種の国に影響する課題だ。黒人、ヒスパニック、ユダヤ系と東洋系などそれぞれ住む土地での力関係もあるだろう。
しかしビール・サミットとはいかにもアメリカらしく粋だ。英語で何というのだう、”エスプリ”日本でも欲しい。

手負い虎 さんのコメント...

お恥ずかしい話をご紹介します。早朝、私は、自分の悪夢で目を覚ましました。其れは「がき」の頃から、結婚後30代の頃まで延々と続いた同じ悪夢でした。胸の圧迫に苦痛を感じうめきながら、私は「お母様、赦して、赦して!」と何度も絶叫して、最後に自分の絶叫で目が覚めるのです。覚えている限り、2歳の頃から受け続けた母の折檻の夢でした。

私は現在68歳です。成人してからも48年たっています。私はこの苦痛の思い出をすでに克服しており、正気でいるときは、思い出しもしません。其れが意識下の脳に刻まれた記憶となって、実に私の生涯すべてにわたって夢の中で顔を出すのです。

ところで、黒人が白人と出会って以来、何世紀がたっているでしょう。住んでいる土地から「人」としてでなくほとんど家畜として連れてこられ、売買され、不当な人権侵害を受け、凄惨な歴史を経てきました。それでも、アメリカの黒人は幾多の困難を乗り越えて、多くの人の血の上に、生育した多民族国家の英知の元に、白人と互角の勝負をして、黒人の大統領まで出すまでに成長を遂げました。其れは被害者であり続けた黒人だけの努力でなく、加害者であった白人側の成長があったからです。

ところで、黒人に、数世紀の間蹂躙され傷つけられた人種としての「歴史」をすべて消し去るほどの「成長」が、そんなに早く望めるでしょうか。白人は、黒人に「奴隷」にされた経験はないのです。黒人は一方的に奴隷として人間扱いされなかった歴史があり、其れを踏み越えてきた今、民族の中にくすぶった過去への「報復の念」はありうることだし、自由と人権をたてにとっての「逆差別」ぐらいのことはありうるでしょう。彼らの中に人種差別の「歴史的思い出」が完全になくなるほどの「成長」が望めるのは、「思い出」を共有した人々が、一人残らず消えてなくなるくらい時がたち、深い深い怨念の「悪夢」が、民族のDNAの中から姿を消すほど差別がなくならない限り、続くのだろうと思います。

其れはちょうど、私が成長し、正気でいる間は忘れ去っている過去の悪夢が、夢の中で頭をもたげるのと同様に、ほとんど「無意識」なのです。

私がアメリカ経由で旅行するのを嫌うのは、実は、イミグレの黒人女性の役人の態度に頭にきているからなのです。尊大で傲慢、勝手で気まぐれ、「自分よりも劣った民族」と私のことを考えているのか、彼女たちの「ラテンアメリカ人、および、それに関連しているらしいアジア人差別」のために、乗り継ぎの飛行機にまにあわず、いつも腹を立てているのです。

個人的に言って、黒人、大嫌いです。しかし、「私と関係ない接することもない黒人が黒人の権利を掲げて白人を相手に楯突く」とき、私は、理性を忘れて、黒人に同情をしてしまいます。彼らはまだ、彼らの経てきた歴史的悪夢から自由ではないのだ、と考えてしまいますから。