2011年3月2日水曜日

30年分の知識と経験     

年齢を増すことは それだけ人は知識が豊富になること、 と
二人の子供を育てているときに私が何度も説いた言葉だ。 生意気な言葉を発する度に
去年の自分と今の自分を比較してごらん、あの頃の自分はまだ幼かったナ~と感じない?
この一年でどれほど自分が学んだか、成長したか 自分が誇らしく感じるでしょう?
それと同じよ、ママは貴女たちよりも 少なくとも30年は 長く生きているのよ。
その30年間の知識を考えてみてごらん、どんなにママが凄いかって 分かるでしょう?
そんなママに生意気な口は止めなさい!

これで 子供達はたいてい黙った。 黙らせた。しかし、その子供達が今は30代。
最近までは 目上を敬う気持ちからか、それとも 又あのママの説教は聞きたく
ないからか、 私への口答えはしなかった。日本語式のタメ口も両親へは使わなかった。
むしろ敬語での会話が主体だった。(英語に敬語なんてあるのと考えないで欲しい。どこの国
にも、人へ尊敬の念を持っての言葉は存在する)私自身が子供達へ出来うる限りの
丁寧な文章での会話をしていた事も理由の一つかもしれない。 

息子などは 高校生の頃は 耳を覆いたくなるような言葉を家の外では使っていたようだが、
一歩家へ入ると言葉が変わっていた。 これは アメリカ一般家庭どこも
同じだと思う。 親に暴言を吐いたら、明日からの生活に支障がきたすからだ。
目に見えない暗黙の規律。 18歳で自活が出来るまでは 親に生意気な言葉は
使わないほうが良い。 当然なことである。誰に食わせてもらっている?これである。

しかし、昨今は「権利」と「義務」が一人歩きしているから、 親は子を育てる義務がある。
子供は家庭の愛情を受ける「権利」があるらしいが。

私の子供達の言葉使いに変化が出てきた。両親に向かって、得に私に向かって
敬老向けの言葉になった。今までなかった「気ずかい」が表にチラチラと現れている。

娘は私に向かって「ママ大丈夫?」 「歩くときはもっと足を上げないと転ぶから気をつけて」
「週末には外へ出て遊んでいる?」真に大きなお世話である。

息子などは ほとんどコンピューターに関してだが、 もうこの辺の知識は彼の父親も太刀打ちできない。 私が何か質問すると、子供に説明するような言葉使いをする。
「こう言ったら分かるかな~」と例え話を使う。彼らがまだ子供の頃私がしたように。

何時の日からこうなってしまったのだろうか? 喜んで良いのか、己の老いを哀しむのが
良いのか? しかし、 分かっているのだ、 子供達が正しいのが。 

昨日、足の持ち上げ方が少なくて、見事に転んでしまった。 半歩持ち上げて歩道に上がるのに、右足が持ち上がりきれず見事にペチャンコ。左膝を擦りむき、右のつま先は突き指状態。
痛い、真に痛い。 踝から下が晴れ上がっている。ゆえに、車の運転が出来ない。
アクセルが踏めない。

先ほど娘から 「ハーイ、ママ元気?」のコールが入ったが、 こちらは痛い足をさすりながら「元気、元気、はつらつとしています」と応えるしかない。 正直に話した後の説教が怖い。

そして、老体となってくるのは私だけではないと哀しく理解したのは、転んだときだ。
本当に暫くぶりに一緒に通勤した私たちは、事務所の前で車を止め、両側から出てきた私と同居人は、一緒に半歩上がって事務所のドアを開けるはずだが、上がれなかった私が、隣でドシャーと転んでも彼は気が付かなかった。 一歩前へ出て、 後ろを向いて「アレッ」と驚いている。

昔の彼は、絶え間なく横を歩く私を支え、 もしも、もしも 転ぶようなことがあっても、敏速に支えてくれたであろうが、 今は アレッである。全身から若さもスピードも消えてしまった。 「アッ転んだの、 これは大変だ」こちらとしては、ゴチャゴチャ言ってないで助けろ、手を貸せ!と怒鳴りたいが、こちらも痛みで声も出ない。やっとブリーフケースを下に置き、
「ドッコイショ」としゃべれもしない日本語の掛け声をかけて私を助け起こした。 

30年間分も余分に持つ知識と経験の私はやはり子供達にこのブザマな話は出来ない。
昔子供達が悪さを私の目から一生懸命に隠そうとしたように、 これからは私が愚かなことをした時に彼らに知られないように知恵を使わなければ。まあ、その為の余分な30年分の知識をやっと利用出来る時が来たと喜ぶことにする。

2 件のコメント:

くじらちゃん さんのコメント...

革袋の一滴さん

お話、身にしみてよーーくわかります。私も3人の子育てをはるか昔に終え、その3人はすでに立派な社会人。私は、日々、自分の体力、知力の衰えと戦っています。

最近、U-bend of life という心強い記事を読みました。
http://www.economist.com/node/17722567

年をとるのも悪くないかなと思わせる記事です。ほんとにこうだといいんですが・・・

革袋の一滴さんのブログは、いつも興味深く、よく読ませていただいています。次の投稿を楽しみにしています。

革袋の一滴 さんのコメント...

くじらちゃん さん コメントありがとうごさいます。
最近知人の一人が、年齢の七ガケ (年齢 x 7)が本来の肉体の年齢になると教えてくれました。
なるほど、 寿命が延びただけ、 私達はいつまでも若いわけですね。

でも 体力、知力の戦いに加えて私は「記憶力」もです。
何時も ペンと小さなノートを携帯していて、それに書き込んでいます。 
最近はICレコーダーをバッグに入れて持ち歩いています。でも何のために持ちあるいて居るのか 未だに自分でも分からないのです。