2011年6月5日日曜日

すき焼き 2

それはまだ鍋物が美味しい季節の頃だった、夫ジョンから電話があった。 シシーがすき焼き食べられるようになりました。 今度の金曜日はどうですか?

すき焼き肉、白たき、豆腐、春菊、葱、醤油にお砂糖。小皿に梅干とラッキョと漬物。きゅうりの酢の物。ガスコンロをテーブルに置き、準備は終わり。
そしてシシーとジョンが訪ねてきた。  

鼻には酸素管を差し込み、大型マスクで顔を覆い、酸素ボンベを片手にぶら下げてドアの前に立っているのを見たときは少々度肝を抜かれた。

四人でテーブルにすわり、彼女がマスクをはずした。右の頬全体に大きな傷跡がまだ真っ赤に炎症を起こしている。入院中体内へ通す管の一つを、
頬に穴を開けて通したのだ。喉を切って管を通すのは見たことがあるが、 顔にまで穴を開けるとは知らなかった。 
テーブルの前に座ったシシーはこれぞすき焼きへの執念に燃えている姿である。

其の晩は病人を配慮して、呑兵衛君の同居人もアルコール抜き、それに伴う前菜もなし。彼女はまだ食が細いという事から直ぐにすき焼きを始めたが、 
そのときにまずガスコンロへ点火することに問題が出た。 酸素ボンベの横にガスコンロはまずい、 それではどうする。 彼女が席をあちらへこちらへと移ったが、
結局四人がテーブルの前に座り、コンロを囲むとすれば、 ボンベも一緒に並ばなければならない。 大騒ぎの末、 ボンベ君はテーブルの下へ押し込まれた。

そして、 お鍋が熱くなったところで、お肉、砂糖、醤油と加え、同居人が日本酒をドバッと鍋へ加えた。 「其れ何?」 同居人「お酒」
シシー「嫌だ、アルコールでしょう?」同居人「すき焼きにお酒は避けられません」

二人の間でひと悶着の後、 今回はしっかりとアルコール分を蒸発させてから彼女は食べる、追加の味付けへのお酒は入れないと決定。
そして、サー 食べましょう、 各々が生卵を小丼に割っているときに、 「私生ものはまったく禁止されているの」アッソ~ それなら、卵なしでどうぞ。 
亭主のジョン君が名残惜しそうに生卵の器をそーっと横へ押した。 夫唱婦随万歳、間違えました 婦唱夫髄万歳。
ジョン君先は長いよ、がんばれや。

四人が満腹感で至福の時を味わった後。 残りの肉、野菜をすべてぶち込み、つくり直し、容器へ入れ、炊飯器に残ったご飯も別容器へ、 
そのお持ち帰りのすき焼きは、その後三回に分けて、シシーの夕食となった。

2 件のコメント:

じゅんたろう さんのコメント...

アメリカで”すき焼き”の材料がそれほどそろうのですか。わー、おいしそうと思うのですが、私はこのごろ食が細くなり一日1、000カロリーもとっていないと思います。
たぶんに神経質になっているのです。風評で、あそこのこれが駄目、肉類はここのでなければと相変わらず放射能の問題が付きまとっています。
東京電力や政府の原発の報道が全くいい加減なのです。特に関東地区はほとんど北関東の食材がスーパーの棚を占めています。輸入品は価格が三割以上値上がりしています。
これほど神経質に成ってはいけないと思いますが、朝食に何か少し口に入れるともう一日中おなかいっぱいです。栄養不足でしょう、血圧上が100以下です。夕方になるとあたりが見えずらいのです。もっと理性的な自分でなければと思うのです、考えすぎです。
よっし!ひとつ”すき焼き”をやろうか、明日は肉屋へ行ってみます。

革袋の一滴 さんのコメント...

じゅんたろうさん こんにちは
すき焼き用霜降り肉は日本の食品店で購入します。
霜降り肉はアメリカ人には 油が多すぎて敬遠されますね。 軟らかくておいしいのですが、 ニューヨークステーキとか、ティボーンステーキのようなお肉が庶民的に喜ばれます。  リブアイなどは、ステーキにしてだすと油の箇所が多いですから、軟らかいのですが、 ナイフですっかり切り取ってしまいます。  目に見える油を嫌うみたいです。  

これから暑い夏になります。 栄養は沢山とって下さい。