2008年5月2日金曜日

秋夫29歳

「お母さん、とても楽しいです。 綺麗なサンジェゴの夕焼けを撮りました、写真を見てください。それから、僕もう帰りません…?」秋夫

こんなメールが休暇でサンジェゴへ出かけた息子から届いた。

添付された写真五枚はサンジェゴの海を燃えつくすような夕焼け空。 何か神の存在を感じるような、まだ行ったことはないが、天国の空はこんなだろうと想像できる荘厳な景色。

息子秋夫の高校の親友スティーブはカリフォルニアのサンジェゴの海岸にあるビーチハウスに住んでいる。築四十年になる古い小さな家だそうだ。サーフィンの若者が集まる海岸から徒歩三分。スティーブの祖父が一人住んで居たが、その祖父が二年ほど前に逝った。空き家になったその家にスティーブが住み始めてもう一年になる。

新しい土地での新生活と云えどもやはり寂しい、頻繁に届くメールや電話に誘われて秋夫も休暇を利用しての敵情視察となったが、ミイラ取りがミイラになったらしい。 

やっとの思いで帰宅はしたが、 若い女性ファッション雑誌の広告部の契約はあと四ヶ月で更新。アパートの契約も三ヶ月で更新。いかに無謀な若者でも、仕事やアパートの契約を最後まで済ますのはこの世の常識であることは知っているようだ。それゆえにやっとの思いで帰宅したらしい。

新しい土地で仕事はあるの?当然の質問である。 休暇で出かけたときにもう履歴書は持参し、二つほど面接をしてきたと返事は早かった。
 そして四ヶ月後の九月一日、大きなトレーラーに彼の全てを積み込み、後ろに愛車モンテカーロを結びつけ、私も行ってみたいとショットガン(助手席)ライダーを名乗り出た妹の直美を乗せて走行時間28時間ノンストップでカリフォルニアへと出発した。

秋夫二十九歳、現在進行中のガールフレンドも居ない、妻も居ない、子供も居ない、この両親の居る土地に縛り付けるものは何もない。 夕焼けが綺麗、海が青い、天候が住み良いそんな理由で移れる若さが羨ましい。

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