我が家の庭の木にリスの巣がある. 毎日ガラス戸越しに彼らの運動会が見られる。朝早くから夕方まで忙しげに隣の家の屋根から塀へと飛びまわっている。 実に可愛いのでついついスーパーで胡桃やペカンを買っては庭に置きその様子を見学させてもらっている。
どこへ隠すのかと後をついていく必要はない、春になればこちらが植えもしない木の実の若木がそこかしこから芽を吹き出す。そんな芽を抜き取りながら、リスたちはきっと、あれは何所へ埋めたかナーと探したであろう考えるのもまた面白い。
知人の家にも数匹のリスが住み着いている。 彼女は毎日家に居るので、同じ時間に庭へ出て胡桃を同じ場所へ置いてあげるのを日課としていた。 しかし彼女と云えども暇な時間を持て余しているのではない、自宅で仕事をしている。 そこで時々餌をあげる時間が狂うことがある。するとリスの家族はガラス戸をとうして中をのぞきソワソワと催促している。 その様子がおかしくて彼女は敢えて時々餌をあげる時間をずらすと云う。
キッチンで洗い物をしていれば、その窓まで登り、ガラスの向こうでジッと可愛い瞳を凝らして彼女を見つめている。
居間へ来れば又そっちへ走って行って窓から彼女の行動を監視している。
そんな姿を見ると人情で彼女も急ぎ庭へ出て胡桃をそっと置いてあげるしかない。
その日は仕事に区切りがつかず彼女はもう何時間もPCの前でキーボードを打ち続けていた。すると耳の中へ、「コツン」と音が聞こえた。 また数分後に「コツン」なんだろうと手を止めて考えているうちに又「コツン」
時間が来てもちっとも手を休めてくれそうもないあの胡桃のおばさんをどうしたらこっちへ気を向けられるか考えたリスは、自爆行為に出た。 一メートルも後ろへ下がり、そこからガラス戸へめがけて自殺行為さながらいちもくさんに走ってきてガラスに向かって自分の体をドスーンとぶつけているのだ。するとコツンと音がする。そして立ち止まり、ジッと家の中の様子を覗き、まだ胡桃のおばさんがこちらを向かないと知るとまた遠くへ行き、いちもくさんに走りその勢いでガラス戸へ自分の体をぶつけている。彼女はその様子を知ったときもうリスの突撃行為がおかしくて一人げらげらと笑いだした。
窓の外では三匹のリスが笑い転げる彼女を真っ黒な大きな瞳で見つめている。「おばん早くせい、飯の時間じゃ、こっちは体の節々が痛いゾ」
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