2009年12月27日日曜日

テキサス チリー


やれやれとため息のもれるクリスマスも終わり、カレンダーの上ではお正月へ向けて駆け足で進んでいる。 一年中それほど忙しい事もない我が家の自営業だが、 毎年何故か年末にかけて忙しくなる。今年もそうだが、 今までは、 正月返上で仕事をしたこともあるが、 物事急がばまわれという事をここ2-3年の間にやっと悟った。

人が休んでいる時に仕事をしても決して精神衛生上良い結果が出ないことを。 休日があると云う事は、昔から、 その日は休めと誰かが云っているという事らしい。 それが 何百年続けられているという事を考えて見なければいけないのだろう。

正月と云っても我が家のはいとも簡単で、 お餅と餡子。冷凍にまだなったままの、お刺身と、せいぜい〆鯖、 あと日本酒を用意すれはおしまい。野菜は小松菜。これは お雑煮用。 何故小松菜なのだろう。 実家の母がそうしていたから。これでも若い頃は、どうにかして子供たちに日本の正月をと少しはおせち料理に努力をしたが、 もう疲れた。 感謝祭、一か月後にクリスマスそして一週間後にお正月。 人とは、何があっても良く食べるものである。 

アメリカ南部の正月料理は、 ハムとブラックアイピーズ。(黒い点が中頃についている大豆)が定番。この大豆をハムの骨と一緒に煮る。日本のお豆と昆布〆の煮物を想像してもらえば宜しい。それにキャベツを煮る家もあるそうだ。 ハムは生ハム。普通豚のもも肉一個分ほどの大きいのを買い、 オーブンで焼く。外側の皮に切り身を入れて、クローブを刺し、マスタード(洋からし粉)と蜂蜜を混ぜたのをぬっては焼く。 塩辛く仕上げてある生ハムの塩分の変わりに蜂蜜と辛子の混ぜ合わせで結構美味しくなる。 あとは出来上がりにパイナプルとチェリーなどを楊枝の助けを借りて突き刺して終わり。 何故大豆かというと、昔のアメリカは貧しく、寒い冬は大豆ぐらいしか食べる物が無かったからだと訊いた事があるが、 確かではない。 

感謝祭の料理にしても、 庭に飼っている七面鳥の首をハネ、後は、 トウモロコシ、かぼちゃ、サツマイモ、ジャガイモ、から始まる、自給自足の野菜の料理が始まりで、今でもそれは伝えられて、野菜料理に終始する。 日本の料理からみれば、 美味しさにも欠け、 華やかさにも欠ける質素な料理である。 ただ食卓に乗せる量が多い。大勢集まって、温かい料理を食べるということだけだ。クリスマスもしかり、決して華麗な物ではない。 日本から来て間もない人たちは一応に、美味しくないという感想をもらす。 大味であるそうだ。 量が多すぎて食べる気がしないと感想を漏らす女性も居た。

食べ物ついでに、 もう何年も前になるが、 京都からの留学生をお正月に引き受けていた事があった。 遠く日本から離れた若い娘さんに少しでも、日本の正月を楽しんでもらいたいと彼女の希望を聴いたら、 お雑煮は 「白みそです」!とおっしゃる。私は関東育ちなので知らなかったが、それではと白味噌を買い込み、 いざ、小松と~ と始めたら、 違います、 中身は大根とこんにゃくと人参も入っています。 なんだ、それなら、ついでに牛蒡と豚肉を入れたら関東でいう「けんちん汁」ではないか。 けんちん汁にお餅が入っているのが 京都風らしい。
所変われば品変わるである。 おにぎりにしても、三角と俵の形と違うのだから、お雑煮だって違っても良いわけダ。 

このアメリカでも、ホットドッグ、ハンバーガーのような簡単な物でも、南部と東部では違うのをご存じかな?  ホットドッグ、マスタード、マヨネーズが東部なのだそうだ。南部では、加えて、ピクルス、 玉ねぎ、チリーを加える。 チリーとは牛肉の細切れをチリー(chili pepper の粉)とクミン(香辛料)や玉ねぎと数時間煮込んだトロリーとした物。
昔のTV映画で 「ローハイド」というのがあったが、クリント イースウードがまだ若かった頃のお話。 その中に出てくる食事シーン、 アルミのお皿に、何やらボチャとした物をスプーンですくって食べていた。 あれが チリーである。南部では 日本のカレーライス(ライスカレーだったかナ)ほど一般化している。しかし、東部の人たちは食さないらしい。 多分東部にはカウボーイは居なかったのだろう。
我が家の亭主は、一年に一度、鹿肉(彼自身で捕って来るか、 友人たちが捕った獲物の時もあるが)、豚肉、牛肉を挽肉機でひき、玉ねぎと一緒に大鍋に作る。 もうそれを作る時は真剣そのもの。 一日がかりで、 ビールをドボドボ、 ウイスキーをドボドボと水変わりに入れてはかき回し、数か月分を作る。 
秋の季節が来ると、チリ クックオフ と呼ばれる、チリーの食べ比べコンテストが数多く行われる。 傑作なのは、 数年前に我が家が所属するカトリックの教会でチリーコンテストがあり、 腕自慢が大鍋抱えて教会の裏庭に集まり、 皆に食してもらい、一番を決めるのだが、 その日の一番評判が良かったのが、韓国人の女性が作ったチリーだった。 
テキサン(テキサス州生まれの人をそう呼ぶ)が歴史を積み重ねた料理を、韓国人の女性が大破したのである。 何故その女性が一番票を得たかというと、 レストランで食べる、一般化した味になり、誰にもなじみのある味だったから票を得たわけだ。  他の、大方は男性であったが 持ち込んだチリーは 、オラガ家さの チリーとなり、 特徴がありすぎた故らしい。癖のある料理は喜ばれるまでには時間がかかる。  

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