70歳を過ぎたらもうお勤めはないと訊いているが、 69歳の亭主殿はさしずめ陪審員義務の最後通達に先日出かけていった。 過去に何十回来たか覚えていないが、 毎回決してお役目御苦労さままでは至らず、ハイ ご足労様ですと あとから 五ドルの小切手が駐車場代として届くだけであった。 しかし、今度は 一歩前進、法廷の中まで辿りつき、 午後の三時まで拘束されてのお勤めであった。
まずは 朝の8時。 陪審員選別室には300名ほどが集められている。 ここは 殺人、放火、レイプ、窃盗など重罪犯を取り扱う裁判所である。
一つのケースに約65名と分けられ 各々の法廷に入る。 我が亭主及び他の64名が入ったのは 殺人犯の法廷。 裁判長、検察官、弁護士、そして すでに 起訴された 殺人犯も法定に着席して これから始まる陪審員選別の準備をしている。
まず裁判官から これから始まる陪審員の役割、意味、選別方法を説明、
この裁判は 判決と共に 陪審員が犯人の服役期間の決定の義務もあると説明する。
5年~99年の服役の決定は 裁判官による決定か、陪審員の決定にするかは 起訴された犯人が決めるのだそうである。 このケースの犯人は 陪審員による決定を希望していた。
そして 検察官のすでに起訴された犯人の罪状の説明。
情状や理由などは 説明されない。 それは 裁判が始まってからの事である。 犯人に対する予備知識になるような説明は一切ないという。 そして、 犯人側の弁護士の説明もあったが 犯人への同情心を呼び起こす説明は禁じられているので わずかな説明だけである。
その後に 陪審員予備軍への 質問が始まる。 これは 検事側と弁護士側からはじまるが 主になる事は一人一人の性格や 犯罪や犯人への姿勢への質問と観察であったと云う。
質問のひとつ。 判決を受けた殺人犯でも、 情状酌量にて釈放となることに肯定出来るか否か?
相当に意味の深い質問である。 そこで 一人が裁判官に説明を求めた。例えでなく実際ケースとしての説明を求めた。
答: 59歳の夫が、 55歳の末期癌の妻の痛み苦しむ姿に耐えられなく、 また妻からも殺してくれと再三望まれて、その妻を射殺した。
このケースの殺人犯は 規定通り刑務所に服役すべきか、 社会へ戻すべきかの意味なのだそうだ。
また、 陪審員予備軍からも質問が自由に許される。 そうである納得がいかなければ困るのである。
予備軍からの質問一つ: 法定でもし、 法医学の報告がなされるときには、どの様な計器を使用して、DNAや指紋検室したか 法医学室の見学もできるか?
裁判官の答: その時が来たら、 もちろんご要望なら 見学は出来ます。
ちなみにこの質問を出した人は陪審員にはならなかたそうだ。
そのあとに行われるのが 検察側と弁護士側からなる12名の選別。 私この人、あなた この人ダメ。私はこの人、 ダメダメその人は止めて頂戴とまあ、こんな具合で、 両方が 6名づつ 自分たちに有利であろう人を選ぶ。 検察官は 罪に対する合法と正当な考えの人。 弁護士側は 感情の起伏の強い、優しさ、同情の感情を呼び起こせる人となる。 彼らは月曜日から始まる裁判の陪審員となる。 通常なら4日から 10日で判決まで持っていかれるとの事。 もちろん その間は この12名の陪審員は 仕事には戻れない。 毎日裁判所に通勤である。
我が亭主と 昼食を一緒にしてインスタントのお友達になった エンジニアー と 会社経営のオッサンの三人は陪審員には選ばれなかった。 ご帰宅となった彼らはニンマリと微笑んでいたそうだ。 我が亭主曰く、 もしも、 選ばれたて、 10日間も仕事に戻れないかもしれないと思ったら頭がクラクラしたそうである。
1 件のコメント:
日本でも先月21日から裁判員制度が始まった。今月2日まで24都府県で54人の被告が起訴され、そのうち東京都での2人歯すでに公判手続きが始まる。順調に行けば7月末頃にはこの制度の第1号となるそうである。大阪がもっとも多く10人だそうである。そのうち6人が外国人でやはり営利目的の覚せい剤密輸の起訴。あと強盗傷害13人、殺人6人、同未遂6人などである。これ等に一般の人々が裁判員に選ばれて如何できるのであろう。中には裁判員の個人情報は本当に伏せられるのか不安であるとの声が多い。
不当に拒否した場合罰則があるという。自己の考えを正確にいえない日本人の性格として果たして勤まることだろうか?
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